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◆制作秘話

 今回の新CMはまず、飯田市出身のタテタカコさんの音楽を採用する方向で動き出しました。
タテさんは地元飯田市を拠点に音楽活動を続けており、真摯にメッセージを伝えようとする美し い歌声は、幅広い支持を得られると期待しました。
 当初はタテさんの音楽をバックに実写映像のCMを制作予定でしたが、若い販売部員から、現 在アニメ界で高い評価を得ている小海町出身の作家・新海誠氏の起用が提案されました。いままでアニメによるCMは無く、想定もしていなかったが、若い人をターゲットとするには面白いアイデアということで、早速打診を行ないました。

 新海氏は最新作「秒速5センチメートル」が完成したタイミングで、「スケジュール的にも余裕があり、信毎からの依頼であれば受けてみたい。」と前向きな意向を示してくれました。
 早速、タテさんサイドにも打診しOKを得たため、東京でタテ・新海両氏が直接会う場をセッティング、6月初旬に実現しました。
 打診からあまり時間を経てないにもかかわらず、新海氏は既に故郷の小海線をモチーフとしたラフスケッチを用意してあり、それを見たタテさんが映像のきれいさとプロットに思わず涙する 場面もあり、順調にコラボレーションが実現しました。
 新海氏はすぐに小海町の風景を入念に取材開始。小海線に新たに導入されるハイブリット車両を画面に取り入れることを決めました。
 一方、タテさんは新海氏の映像を見て、当初予定した曲に替え、このコマーシャル向けに新曲を制作することを 決意。曲は忙しいスケジュールの合間を縫って、7月中旬八ヶ岳のスタジオで収録されました。曲名は「遠い日」。 まったくの新曲で、収録段階では曲名も正式に決定していませんでした。
曲の完成とほぼ同時に新海氏のアニメも完成に近づき、繊細な描写、微妙な光の当て方、圧倒的な背景力など、 高い評価を得ている新海誠氏の力量が十分に発揮された作品が仕上がりました。 最終場面にはタテさんが曲を収録した場所“八ヶ岳”のシルエットがさりげなく置かれ、 声優には「秒速~」の主演を演じた近藤好美さんを起用。
 7月末に音と映像を合わせ、8月中旬にようやく、県ゆかりのアーチストのコラボレーション による斬新な15秒のCMが完成しました。
 歌詞は最後のサビ部分と冒頭部分の2パターンを採用。インパクトを与える『サビバージョン』 と、絵とマッチして静かにタテさんの声が流れる『歌いだしバージョン』、どちらも捨てがたく、 結局2パターンとなりました。見比べてみてください。

◆タテタカコ profile

1978年7月24日生まれ
長野県飯田市在住
国立音楽大学音楽教育学科卒
https://www.facebook.com/tatetakako.official

 2001年頃から地元長野県飯田市を中心にライブ活動を始める。ピアノと歌だけを携えて、剥き 出しの表現者魂に導かれるまま独立独歩で歌って歩く。どうにもつかみきれないねじれた感性か ら特徴的な言葉を紡ぎだし、心象原風景にある懐かしいシンプルなメロディーを、確実に安定し た演奏力で奏でられるピアノに織り交ぜながら歌う。単に澄んでいるだけではない毒のあるライ ブパフォーマンスが印象的。
 2004年夏、映画「誰も知らない」(04/是枝裕和監督作品)挿入歌「宝石」を収録したアルバム 「そら」をリリース。

 以降、倉橋ョエコ、アナログフィッシュ、eastern youth、遠藤ミチロウ、向井秀徳アコーステ ィック&エレクトリック、野狐禅、Bleach、リクオ、石橋英子(ex.バニラックスマイル)、ほか 多くの個性的なアーティストと共演するなど、全国各地で精力的なライブ活動を展開。演奏する 場所も、ライブハウス、ホールやカフェ、街頭などはもちろん、能楽堂、教会、寺社、アトリエ、 美術館、博物館の中庭、酒蔵、焼物の窯の中など、特徴的な会場を多く選択。あらゆる状況でそ の表現力を研磨し続けている。
 2005年、自らの内面世界を精微に描写し、芸術的評価を高めたセカンドアルバム「裏界線」、 そして、“飯田三部作”完結編「稜線の彼方へ」を立て続けにリリース。ピアノと歌だけで独自 の表現世界を綴りあげた文学的小品集は多くの人々の心を打ち、各地で「人」の体温がじわじわ と伝わるような独特な支持を集め始めている。
 2007年春、よしもとばなな原作による映画「アルゼンチンババア」の主題歌としてシングルで 「ワスレナグサ」を、更にピアノと歌による表現を深く掘り下げたフルアルバム「イキモノタチ」 をリリース。

◆新海 誠 profile

1973年長野県小海町生まれ
大学で国文学を専攻、5年間のゲーム開発会社勤務を経て、映画監督・映像作家として活躍中
https://twitter.com/shinkaimakoto

1999年「彼女と彼女の猫」を発表。
2002年たった一人で作り上げた「ほしのこえ」を発表し、同作品で新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」、 第6回文化庁メディア芸術祭「デジタルアート部門特別賞」など多数の賞を受賞。
2003年「みんなのうた」でオンエアされた『笑顔』(歌:岩崎宏美)のアニメーションを担当。
2004年「雲のむこう、約束の場所」が渋谷・シネマライズ他、全国の劇場で公開されロングランを記録。第59回毎日映画コンクールでアニメーション映画賞を受賞。 そのほか海外の数々の映画祭でノミネートされ、カナダのファンタジア映画祭では金賞を受賞のほか、国内外で高い評価を受ける。2005年に発売された同DVDも好調なセールスを記録し、すでに、北米、アジア、欧州の30ヶ国以上で発売されている。
2007年3月に短編連作アニメーション「秒速5センチメートル」が渋谷・シネマライズ他、全国30館以上で拡大ロードショー公開され、 前作同様ロングラン上映記録。同じく7月DVDを発売。また、小説版「秒速5センチメートル」を「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー刊)で連載し小説家としてもデビュー。 単行本としての発売も決定している。
◆CMソング「遠い日」

いつか見た風景を 思い忍んでみても
色あせた遠い日は いづこへ

コウモリガサをさして 水たまりをとびこえ
どろだんごが おっこちないように抱え

今日おきたことを全部 何度も口に出して
忘れないように早足で 帰る

ぼんぼりは軒下に しばし雨宿り
うだるような暑さと 蝉雨時
夕方の鐘が鳴る カラスもとんでいく
かくれんぼの続きは 明日ね

日常にあふれている くたびれかけたあの日
すくいとりたい のぞきこんで にじまないで
道草のあの坂を 今だって通っている
つかまえて あの日の僕 にじまないで

笑っていますように 思いきり泣いていますように
とびきりの声を はりあげて 思いのたけを

(歌いだしバージョン)

(サビバージョン)

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